第3章 USJ襲撃事件編
「……でも」
銃口が、脳無へ向く。
「今は、そんなこと言ってられない」
引き金に指をかける。
脳無が相澤を掴み上げる。
「――そこ」
パァン!!
乾いた銃声が、訓練場に響いた。
弾丸が脳無へ命中する。
「……?」
脳無の動きが、一瞬止まった。
彼女の瞳が鋭くなる。
「入ったわね!」
その瞬間、彼女の個性が、弾丸を通して脳無へ侵入する。
――支配。
脳無の身体が、わずかに震えた。
「……?」
相澤も目を見開く。
脳無の手が止まっている。
彼女は銃を下ろさない。
「その手を離しなさい」
脳無の身体が反応し、相澤先生から手を引いた。
ゆっくりと、脳無は彼女に近寄る。
「……なにを……」
相澤の前にいた脳無が、彼女に傅いていた。
「ヴィランを根絶やしにしなさい」
彼女の言葉を聞いた脳無が敵であるヴィランへ向かって歩き出す。
そして、
ガシッ。
一人のヴィランを掴んだ。
「な、俺は味方だろ!?――」
脳無がそのヴィランを攻撃する。
「うわあああっ!!」
周囲が騒然となった。
「脳無が味方を攻撃した!?」
「どうなってんだ!?」
彼女は静かに見ていた。
脳無が、次のヴィランへ触れる。
その瞬間。
彼女の個性が伝わる。
「……一体目」
さらに。
「二体目」
また一体。
「三体目……」
支配が広がっていく。
彼女が直接攻撃したのは、一体だけ。
けれど、その一体が別のヴィランへ干渉することで、支配は次々と伝播していく。
「これが……」
相澤が息を呑む。
彼女は脳無を見つめながら、淡々と言った。
「私が前線に立たなかった理由です」
「……お前の個性は一体……!」
相澤の目が鋭くなる。
彼女は銃を構えたまま、視線だけを動かす。
「私の個性は、単純な観察能力じゃありません」
「!!」
「物体に個性を纏わせて、相手を支配する」
彼女の瞳が細くなる。
「そして――」
支配された脳無が、さらに別の敵へ襲いかかる。
「支配は、接触によって伝播する」
相澤は理解した。
だから彼女は使わなかった。
使えなかったのだ。こんな個性、強力すぎる。
一度広がれば、敵味方の区別なく巻き込む可能性がある。
「だったら、なんで銃なんか……」
「二段階です」