第10章 神野区の悪夢編
オールマイトも苦笑しながら、ようやく顔を上げた。
「君らしいと言えば、君らしいが……。それでも、我々が君を守り切れなかった事実は変わらない。今後は同じことが起きないよう、学校全体で対策を講じていくつもりだ」
「はい。よろしくお願いします」
彼女は素直に頷いた。
ひと通り謝罪を終えると、話題は本来の目的へと移った。
「さて、今回の訪問についてだが……」
相澤が手元の資料を置く。
「公安から、ある程度の情報は先に入っていると思う。だから、形だけの説明になる部分もあるが、正式に伝えておく必要がある」
彼女は静かに背筋を伸ばした。
「雄英高校は、今後、全寮制に移行することになった。生徒の安全を確保するためだ。校内で生活を共にすることで、外部からの接触を防ぎ、異常があった際にも迅速に対応できるようにする」
「全寮制、ですか」
「そうだ。これまで以上にクラスメイトとの距離も近くなる。共同生活になるから、今までの学校生活とは勝手が違うだろう」
相澤はそこで、彼女の顔を見た。
「まあ、お前なら、うまくクラスに馴染めているから問題ないだろうがな」
「そうでしょうか?」
「少なくとも、俺が見る限りではな。周囲との関係も悪くない」
「それならよかったです」
彼女は微笑んだ。
けれど、その笑みはすぐに消えた。
膝の上で重ねた手に、ほんのわずかに力がこもる。
「……一つ、聞いてもいいですか?」
「なんだ?」
相澤が応じる。
彼女は一度、視線を落とした。
「私も、寮に入っていいんでしょうか」
二人の表情が変わった。
「どういう意味だ?」
「私の個性が、これまでとはまったく違うものだと分かりました。オール・フォー・ワンが狙ったほどの力です。今後、ヴィランたちが私を標的にする可能性は、以前よりも高くなると思います」
彼女は淡々と話していた。
けれど、それは自分の危険性を正確に理解しているからこその言葉だった。