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光の裏側で、君と ※ヒロアカの爆豪寄り

第10章 神野区の悪夢編


彼女の胸の奥が、かすかに揺れた。


彼は彼女の強さだけでなく、その危うさも、頑なさも、誰にも見せたくない弱ささえも知っている。

そのうえで、好きだと言った。

だからこそ、厄介だった。


「……私は、誰のものにもならないわ」


彼女はタバコを灰皿に押しつけ、火を消した。
そして、ホークスをまっすぐに見据える。

「うん」

彼は、意外なほどあっさりとうなずいた。

「君はそういう人だよね」

「なら、答えは分かったでしょう」

「まだ」

「……は?」

「好きだって伝えただけだから。返事は、君がしたくなったときに聞くよ」

そう言って、ホークスはいつもの笑みを浮かべた。
ただし、その目だけは笑っていなかった。

「でも、ひとつだけ覚えておいて」

彼は彼女のすぐそばで足を止める。

「君が誰かを大切に思うようになったこと。それ自体は、悪いことじゃないよ」

彼女の瞳がわずかに揺れる。

「だから、無理に否定しなくてもいいんじゃない?」

その言葉を残し、ホークスは踵を返した。
屋上の扉へと向かう背中は、いつもと変わらないように見えた。

けれど、扉に手をかけたところで、彼は一度だけ振り返った。
「あと、タバコ。身体に悪いから、ほどほどにね」

「余計なお世話よ」

「はいはい」

軽い返事とともに、扉が閉まる。
再び、屋上には彼女一人だけが残された。
青空は、相変わらずどこまでも澄み渡っている。

「……本当に、馬鹿ばっかり」

彼女は誰にともなく呟いた。

ホークスの告白も、彼が残していった言葉も、頭から追い出そうとすればするほど、鮮明に蘇ってくる。

――君が誰かを大切に思うようになったこと。それ自体は、悪いことじゃない。

「……うるさい」

そう呟いても、もう聞こえないはずの声は消えてくれなかった。
彼女は新しいタバコを取り出しかけ、ふと手を止めた。
脳裏に浮かんだのは、ホークスの顔ではなかった。

無遠慮に怒鳴り、遠慮なく踏み込んできて、それでも彼女が傷ついたときには、誰よりも真っ先に気づく少年。

乱暴で、不器用で、けれど――。

「……っ、違う」
彼女は勢いよく首を振った。
考えるな。
今は任務のことだけを考えればいい。
そうやって、いつものように自分の感情に蓋をしようとした。
けれど、一度開いてしまった扉は、もう完全には閉じてくれなかった。
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