第10章 神野区の悪夢編
任務続行という方針で話はまとまった。
目良とホークスが病室を後にしてから、しばらくの時間が過ぎた。
静かな病室に一人残されたおもちは、窓の外へと視線を向けた。白いカーテンの向こうには、雲ひとつない青空が広がっている。
……息が詰まる。
先ほどから、どうにも胸の内が落ち着かなかった。
ホークスに指摘された言葉が、何度も頭の中で繰り返される。
――本当は、クラスの連中と離れたくないんじゃないの?
「……っ、くだらない」
小さく吐き捨て、彼女はベッドから身を起こした。
考えたところで答えが出るわけでもない。それならば、少し外の空気を吸ったほうがましだ。
病院内のコンビニでタバコを一箱購入し、エレベーターで屋上へと向かう。
扉を開けると、頬を撫でる風が心地よかった。
真っ青な空。遠くに見える街並み。眼下を行き交う人々は、彼女がここで何を経験したのかなど知る由もない。
フェンスにもたれ、慣れた手つきでタバコに火をつけた。
ゆっくりと吸い込み、紫煙を燻らせる。
肺に広がる煙とともに、苛立ちまで吐き出せる気がした。
――任務の合理性を説明しただけ。
――仲間意識?そんなもの、任務を遂行するうえで生じた副次的な感情にすぎない。
そう自分に言い聞かせる。
けれど、ホークスのあの目が脳裏に浮かぶたび、胸の奥がざらついた。
まるで、こちらの隠していたものを見透かしたかのような目。
「……チッ」
舌打ちが、静かな屋上に落ちた。
そのときだった。
背後で、屋上へ続く扉が開く音がした。
足音が近づいてくる。
振り返るまでもなく、その気配を察した彼女の眉間に深い皺が寄った。
今、最も顔を合わせたくない人物だった。
「何しに来たの、ホークス」
冷ややかな声で告げる。