第10章 神野区の悪夢編
検査結果の説明を終えたおもちは、病室へと戻った。
ベッドの端に腰を下ろし、深いため息をつく。
個性名は、絶対支配。
自分の中に眠っていた龍こそが、その力の本質だった。オール・フォー・ワンに個性を奪われかけたことで、封じられていた力が目覚めたのだ。
あまりにも急な変化だった。
これから、この強大な個性をどう扱っていくのか。自分の意思で、どこまで制御できるのか。そして何より、公安から命じられていた雄英への潜入捜査は、今後も続けられるのだろうか。
考えるべきことが多すぎた。
「……頭が痛いわ」
彼女は両手で頭を抱えた。
ようやく命の危機から脱したというのに、休む暇もない。むしろ、あの戦場で力が目覚めたことで、状況は以前よりも複雑になってしまった。
そんなときだった。
コンコン、と控えめなノックが響く。
「どうぞ」
顔を上げた彼女は、開いた扉の向こうに見知った二人の姿を見つけた。
「やあ。元気そうで何よりだね」
軽い調子で手を振るホークス。
その隣には、公安の目良が立っていた。
「……二人揃って、わざわざ病院まで来るなんて。ずいぶん大事になったものね」
「実際、大事だからね」
目良は淡々と答え、病室の扉を閉めた。
ホークスも普段の飄々とした笑みを浮かべてはいたが、その目はいつになく真剣だった。
「座ってもいいかな?」
「どうぞ。ちょうど、これからのことを考えて頭を抱えていた所」
「それなら、話は早い」
目良は椅子に腰を下ろし、手元の資料を開いた。
「今回の件について、整理しておく必要がある。君の個性の本質が明らかになったこと。そして、その力がヴィランにとって極めて大きな脅威になり得ること。さらに、雄英高校での潜入捜査を今後どうするかだ」
彼女の表情から、わずかに笑みが消えた。
やはり、その話だった。