第10章 神野区の悪夢編
黄金の光が、戦場を覆い尽くしていた。
天を貫くほど巨大な龍が、悠然とその身をくねらせる。黄金の鱗は太陽のように輝き、鋭い眼光は、そこにいるすべての者を射抜いていた。
その姿は、神々しくもあり、恐ろしくもあった。
オール・フォー・ワンでさえ、言葉を失っている。
「……絶対支配」
彼女は、宙に浮かんだまま、自分の唇からこぼれた言葉を繰り返した。
そうだ。
自分の個性は、絶対支配。
何者であろうと、何であろうと、その支配下に置くことのできる力。
これまで彼女が見せてきた能力は、そのほんの一端にすぎなかった。自分自身も、周囲の環境も、他者の個性さえも。あらゆるものに干渉し、支配することのできる、あまりにも強大な力。
そして、その力の権化こそが。
彼女の背後に浮かぶ、黄金の龍だった。
「……あなたが」
彼女は、ゆっくりと顔を上げた。
龍の巨大な瞳と、視線が交わる。
その瞬間、不思議な感覚が胸の奥を満たした。
恐怖はある。
目の前の存在が、自分の想像を絶する力を持っていることも分かる。
それなのに、初めて見るはずのその姿に、どこか懐かしさを覚えていた。
夢の中で、何度も見た。
水面に浮かぶ赤い鳥居。その向こうに広がる、果てしない空間。
そして、いつも眠っていた黄金の龍。
『…………』
龍は、彼女を見つめていた。
「龍……そう、あなただったのね」
彼女の声に、わずかな笑みが混じる。
「夢の中で何度も起こそうとしたのよ。ねえ、聞こえていたんでしょう?」
問いかけると、龍はゆっくりと首を傾けた。
『……ふむ』
低い声が、彼女の意識に直接響く。
『何度も騒がしい娘だとは思っていた』
「騒がしいって……!」
思わず眉を寄せる。
こんな状況でなければ、もっと言いたいことがあった。
夢の中でいくら呼びかけても目を覚まさなかったくせに。こちらがどれだけ困惑していたと思っているのか。
けれど、彼女はすぐに気持ちを切り替えた。
今は、理解しなければならない。
この龍が何者なのか。
そして、自分の中で何が起きているのか。