第10章 神野区の悪夢編
彼女は、黄金の光の中心に浮かんでいた。
純白のドレスが光を受けて輝き、長い髪が風もないのに揺れている。
その顔は、まだ意識を取り戻したばかりのあどけないものだった。
しかし、その周囲を包む力は、もはや誰もが知る彼女の姿からは想像もできないほど圧倒的だった。
そして、龍の瞳が再び彼女へと向けられる。
その眼差しには、先ほどまでの怒りとは異なる色があった。
まるで、長い眠りから目覚め、ようやく探し求めていたものを見つけたかのような。
『……ようやく、外に出られた』
その言葉が誰に向けられたものなのか、理解できた者はいなかった。
彼女自身でさえ、分からなかった。
ただ、胸の奥で何かが呼応している。
懐かしく、恐ろしく、そして、どうしようもなく自分自身に近い何かが。
黄金の龍は、彼女の背後で大きく身体をうねらせた。
その巨体が天を覆うように広がる。
誰もが息を呑む中、龍の声が再び響いた。
『我が名は――』
だが、その続きを聞く前に、彼女の意識が大きく揺らいだ。
身体から力が抜けていく。
まぶたが重くなる。
それでも、彼女の唇がかすかに動いた。
「……ぜっ、たい……しはい……」
その声は、誰にも聞こえないほど小さかった。
けれど、その瞬間。
黄金の光が、いっそう強く輝いた。
彼女の個性の名は――絶対支配。
それは、彼女自身さえまだ知らなかった、本当の力の始まりだった。