第10章 神野区の悪夢編
オールマイトは、男の腕の中で力なく眠る彼女を見つめた。
白いドレスの裾には、鋭く引き裂かれた跡がある。
意識を手放している様子。
彼女らしくない姿。
そして、彼女らしくないほど、無防備な沈黙。
オールマイトの拳が震えた。
「おもちに何をした……!」
声に、抑えきれない怒気が滲む。
「彼女をどうするつもりだ、オール・フォー・ワン!」
その問いに、オール・フォー・ワンはすぐには答えなかった。
ただ、腕の中の彼女を抱え直す。
まるで、誰にも渡すつもりはないと示すかのように。
そして、仮面の奥から、ゆっくりと笑みを含んだ声が漏れた。
「……どうするつもり、か」
男はオールマイトを見据えた。
「それを君に話す必要があるのかな?」
戦場の空気が、凍りついた。
オールマイトは、目の前の光景を見つめたまま、動かなかった。
その腕の中にいるのは、守らなければならない少女だ。
そして、彼女を抱えているのは、何よりも危険な男。
絶対に、取り戻す。
今度こそ、何があっても。
オールマイトの瞳に、揺るぎない決意が宿った。