第9章 林間合宿
ミスターコンプレスを下敷きにしたまま、緑谷、轟、障子の三人が勢いよく敵の集合場所へと落下した。
「ぐっ……!」
「うわっ!」
地面に叩きつけられたミスターコンプレスが呻き声を上げる。三人はすぐさま身を起こし、周囲を見渡した。
そこにいたのは、荼毘、トガヒミコ、トゥワイス。
そして、少し離れた場所には、黒い霧をまとったワープゲートが広がっていた。
「おやおや……これはまた、随分と乱暴なご挨拶ですねぇ」
ミスターコンプレスは痛みに顔をしかめながらも、芝居がかった口調を崩さない。
「コンプレス!てめぇ、何やってんだよ!」
トゥワイスが叫ぶ。
「いやいや、こちらが聞きたいくらいですよ!」
「うわあ!ヒーローが来ちゃった!でも、来てくれて嬉しい!いや、全然嬉しくないけど!」
トガヒミコは両手を頬に当て、興奮したように声を弾ませた。
一方、緑谷たちの視線は、敵の中にいる二つの小さな球体へと向いていた。
「かっちゃんを返せ!」
緑谷が叫ぶ。
その言葉と同時に、轟の氷が地面を走った。
「常闇を返してもらう」
障子も腕を広げ、周囲の動きを警戒する。
一瞬の攻防。
緑谷たちは、かろうじて常闇を取り返すことに成功した。しかし、爆豪を取り戻すことはできなかった。
ミスターコンプレスの手から解放された常闇を障子が抱え、緑谷と轟が援護する。
その隙を突くように、ヴィランたちは爆豪を連れて後退した。
「待って、かっちゃん!!」
緑谷の叫びも虚しく、爆豪の姿はワープゲートの向こうへと消えていく。
「来んな……デク!」
轟が歯を食いしばった。
あと少しだった。
もう少しで、爆豪も取り戻せたかもしれない。
それなのに
「……緑谷」
轟の低い声に、緑谷は顔を上げた。
「今は常闇を連れて、ここを離れるぞ。これ以上、戦力を失うわけにはいかない」
「……分かってる」
緑谷は悔しさを押し殺し、常闇の無事を確認した。
けれど、彼の胸の中には、もう一つの疑問が渦巻いていた。
爆豪だけではない。
彼女も、ここにはいない。
個性が使えない状態のまま、敵に連れ去られたおもち。
彼女は今、どこにいるのだろう。
何をされているのだろう。
考えるだけで、胸の奥が冷たくなった。