第3章 USJ襲撃事件編
轟は少し考えた。
そして、また彼女を見る。
「……そんなに珍しいか?」
自分にとっては、ただのクラスメイトだ。
けれど、こうして無防備な寝顔を見ると、確かに普段とは違って見える。
少しだけ幼く、そして柔らかく見える。
轟はふと気づいた。
自分は、彼女のことを思っていた以上に見ていたのかもしれない。
戦闘中の動き
話し方
人を見る目
判断の速さ
笑ったときの表情
そして今の寝顔
「……」
自分でも意外だった。
彼女は、ただのクラスメイトの一人だと思っていた。
もちろん、普通のクラスメイトとは少し違う。
何を考えているのか分かりにくい。
けれど、話せば意外と普通に答える。
怪我をすれば手当てをしてくれる。
困っている人間がいれば、気づく。
そして今は、自分の肩で眠っている。
「……変な人だな」
小さく呟く。
けれど、その声には嫌悪はなかった。
むしろ、ほんの少しの親しみが混じっていた。
轟は再び窓の外を見る。
起こす気にはならなかった。
彼女が目を覚ましたとき、自分の肩で寝ていたことに気づいて慌てるのだろうか。
「……そのときは、言えばいいか」
大したことじゃない。
そう思いながら、轟はしばらく、動かなかった。
そして彼女は何も知らないまま、静かに眠り続けていた。
「…着いたぞ」
誰かの声が聞こえた。
「……ん……」
彼女はゆっくりと目を開けた。
ぼんやりとした視界。
窓から差し込む光。
バスのエンジン音。
「……?」
目の前に、何人もの顔。
「……え?」
彼女の目が、わずかに揺れた。
前の席から振り返っている緑谷。
麗日
上鳴
切島
耳郎
八百万
蛙吹
そして、少し離れたところには爆豪
みんなが、こちらを見ている。
「……なに?」
寝起きの声。
普段より少し柔らかい。
その瞬間、上鳴がニヤッと笑った。
「おはよーございます、お姫様」
「……?」
彼女は状況が理解できず、瞬きをする。
「……何かあった?」
「何かあったっていうか……」
麗日が笑いをこらえながら言う。
「ずっと寝てたよ?」