第9章 林間合宿
その頃、別の場所では。
「洸太くん!!」
緑谷出久は、少年を抱きかかえながら森を駆けていた。
背後から迫るのは、筋骨隆々とした巨体のヴィラン。
マスキュラー。
その圧倒的な力を前に、緑谷は何度も限界を超えていた。
腕は悲鳴を上げ、身体の至るところが傷ついている。それでも、洸太を守るために足を止めるわけにはいかなかった。
「……っ、はぁ……!」
息が苦しい。
視界が揺れる。
それでも、緑谷は走り続けた。
ようやく敵を破り、洸太を安全な場所へと送り届けたときには、立っていることさえ難しいほどだった。
「緑谷……お前……」
洸太が震える声で見上げる。
「大丈夫……。君が無事なら、それでいいんだ……」
そう答えた直後、緑谷の膝が崩れかけた。
それでも彼は、仲間のもとへ向かわなければならなかった。
まだ、合流できていない生徒がいる。
そして、マスキュラーの口から聞いた名前が、頭から離れなかった。
――おもちさん。
彼女は今、個性が使えない。
もし敵に遭遇していたら。
考えたくもない想像を振り払い、緑谷は再び歩き出した。