第9章 林間合宿
夜の帳が下りた林間合宿所は、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っていた。
木々の隙間から覗く星空。遠くから聞こえる虫の声。昼間の訓練で疲れ切った身体には、夕食後の穏やかな時間が心地よかった。
「さーて!食後のイベントといえば、肝試しでしょー!」
食堂の片づけを終えた生徒たちの前で、ピクシーボブが両手を広げた。
「肝試しぃ!?」
「マジでやんのかよ!」
上鳴と瀬呂が顔を見合わせる。切島は面白そうに拳を握り、芦戸は早くも目を輝かせていた。
「森も広いし、せっかくの林間合宿なんだから、こういうイベントも必要でしょ!」
「いや、必要性は感じないんですが……!」
飯田が眼鏡を押し上げるも、ピクシーボブは聞く耳を持たない。
そんな騒がしい一団を、おもちは少し離れたところから眺めていた。
林間合宿に来て、三日目。
身体の調子は戻っている。食事も少しずつ取れるようになった。それでも、あの土の魔獣が自分を恐れた理由も、ラグドールが見たという龍の正体も、何一つ分かっていない。
考えれば考えるほど、頭の中に霧がかかっていく。
「……ま、今考えても仕方ないか」
小さく呟き、彼女は使い終わった食器を重ね直した。
そのとき、相澤の声が響く。
「赤点組。お前らは肝試しどころじゃない」
「「「「「えええええ!?」」」」」
芦戸、瀬呂、上鳴、切島、佐藤の五人が一斉に叫んだ。
「補習だ。施設に戻るぞ」
「先生!せっかくの夜なんすよ!?」
「赤点を取った自分を恨め」
容赦のない一言に、五人は揃って肩を落とした。
「うわーん!おもちちゃん、助けてー!」
芦戸が彼女の腕にしがみつく。
「ふふっ。私に言われても、先生の判断は覆らないと思うわ」
「そんなぁ!」
相澤は五人を引き連れ、施設へと向かっていく。
残された生徒たちは、ある程度の片づけを終え、肝試しの組み合わせや脅かし役について、好き勝手に盛り上がり始めた。
「ねえ、おもちちゃんも行こうよ!」
麗日が振り返る。