第9章 林間合宿
「だからこそ、今は無理をしないこと。自分の身体に何が起きているのか分からないうちは、焦って確かめようとしないでね」
「……はい」
彼女は小さく頷いた。
その返事とは裏腹に、胸の奥では、抑えきれない疑問が渦巻いていた。
個性が使えない。
それなのに、魔獣は自分を恐れた。
そして今度は、サーチが自分の周囲に龍を見たという。
自分の中に眠っているものは、いったい何なのか。
彼女は無意識に、自分の胸元へ手を当てた。
何も感じない。
いつもなら、そこにあるはずの力は、依然として沈黙したままだった。
もし、ラグドールの見た龍が本当に存在するのなら。
自分の個性は、完全に失われたわけではないのかもしれない。
そう思った瞬間、胸の奥に、ほんのわずかな希望が灯った。
同時に、言いようのない不安も込み上げてくる。
それは希望なのか。
それとも、自分がまだ知らない何かが目を覚まそうとしている前触れなのか。
答えは、まだ誰にも分からなかった。