第9章 林間合宿
「みんな、休憩時間だよー」
訓練場の端から、彼女の声が響く。
汗だくになっていた生徒たちが、一斉に顔を上げた。
「うおっ、助かる!」
切島が真っ先に駆け寄り、用意された飲み物を受け取る。
「ありがとう、おもちちゃん!」
「どういたしまして」
彼女は一人ひとりの様子を確認していった。
顔色は悪くないか。呼吸が乱れすぎていないか。疲労がたまっていないか。
訓練そのものには参加しなくても、観察することならできる。
「轟くん、少し休んだほうがいいんじゃない?さっきから呼吸が深くなっているわ」
「……分かった」
「緑谷くんも、腕痛めていない?」
「えっ?あ、うん!大丈夫だよ!」
「本当に?あとで確認させてね」
「は、はい!」
いつもの調子で生徒たちを気遣う彼女の姿に、クラスメイトたちの表情も自然と和らいでいった。
一方、爆豪は飲み物を受け取ると、彼女をじっと見た。
「……お前、ちゃんと休んでんだろうな」
「私は大丈夫だよ」
「その台詞、何回目だ」
「ふふっ。心配してくれているの?」
「はァ!?誰が心配なんか……!」
「ありがとう。気をつけるわね」
あっさり返され、爆豪は言葉に詰まった。
「……チッ!」
乱暴に顔を背ける彼を見て、少し離れた場所にいた切島がにやにやと笑っている。
「爆豪、お前さぁ……」
「うるせぇ、殺すぞ!」
いつものやり取りに、周囲から笑い声が上がった。
彼女はそんな彼らを見つめ、柔らかく目を細めた。
自分が訓練に参加できないことは、やはり少し寂しい。
それでも、こうしてみんなの役に立てることは嬉しかった。