第9章 林間合宿
「訓練中の水分補給のサポートとか、施設の清掃とか。あとは、食事の準備を手伝ってもらうのもいいわね。もちろん、無理のない範囲で」
「料理か……」
「ほら、今日は食べて個性を伸ばす訓練をする子たちもいるでしょう?食事は大切よ。みんなのためにできることがあれば、本人も気兼ねなく休めるんじゃないかしら」
相澤はしばらく黙って考えていたが、やがて頷いた。
「……それでいくか」
「決まりね!」
マンダレイは満足そうに笑った。
「というわけで、今日は訓練のサポートを頼みたい」
相澤から説明を受けたおもちは、ぱちりと目を瞬かせた。
「水分補給の準備と、施設の清掃。それから、お昼の料理のお手伝い……ということですか?」
「ああ。身体に負担がかかることはするな。訓練への参加も、今日はなしだ」
「分かりました。ありがとうございます」
彼女は素直に頷いた。
個性を使えない自分に、何ができるのか。
昨日からずっと考えていたことだった。
けれど、こうして役割を与えられたのなら、それを果たせばいい。訓練に参加できなくても、仲間たちを支えることはできる。
「せっかく合宿に来たんだもの。できることを頑張るわ」
そう言って微笑む彼女に、相澤は念を押した。
「頑張りすぎるなよ」
「はい」
返事だけは、実に素直だった。
相澤は、その笑顔にわずかな不安を覚えながらも、ひとまず彼女をマンダレイに任せることにした。
「はい、これ!よかったら使ってちょうだい」
マンダレイから手渡されたのは、清潔なエプロンだった。
「ありがとうございます。お借りしますね」
彼女は礼を言い、エプロンを身につけた。
この日の私服は、普段の落ち着いた印象とは少し違う、華やかなギャル系のコーディネート。髪もきれいに整えられている。
その上からエプロンをつけると、不思議なことに、どこか家庭的な雰囲気が加わった。
「……あら、似合うわね!」
マンダレイが感心したように声を上げる。
「本当ですか?」
「ええ!とってもかわいいわ」
彼女は照れくさそうに笑い、エプロンの紐を結び直した。
こうして、個性訓練に励む生徒たちを支える一日が始まった。