第9章 林間合宿
「なんか今日のおもちちゃん、いつもと違う気がする……」
「そう?」
「うん。いつもは、すごく綺麗でかっこいいって感じなんだけど……今日は、なんていうか……」
麗日は言葉を探すように視線を泳がせた。
「……儚い、っていうのかな」
その言葉に、彼女は一瞬だけ目を伏せた。
儚い。
今の自分に、ぴったりの言葉なのかもしれない。
個性という、自分を形作っていた大きなものを失い、今までとは違う自分になってしまった。
けれど、それを認めるのは、まだ少し怖かった。
「……そう見えるのかしら」
彼女はいつもの調子で微笑んだ。
「でも、心配しないで。私は大丈夫よ」
「もう!またそれ!」
芦戸が頬を膨らませる。
「大丈夫って言う人ほど、無理してたりするんだからね!」
「そうですわ。体調に変化があれば、遠慮せずに伝えてくださいませ」
「そうそう。みんなで合宿に来てるんだから、ひとりで抱え込まないでね」
麗日も、八百万も、真剣な表情で彼女を見つめていた。
彼女は一瞬、返事に迷った。
心配をかけたくない。
けれど、心配してくれる人たちの気持ちを、無下にしたいわけでもなかった。
「……ありがとう」
今度は、誤魔化すためではない笑顔を浮かべる。
「何かあったら、ちゃんと相談するわ」
「絶対だよ!」
「ええ、約束」
そう答えると、彼女は再び夜空を見上げた。
星は変わらず、静かに輝いている。
個性を使えなくなった自分は、これまでと同じではない。
それでも、こうして美しいものを美しいと感じる心も、友人たちの優しさに温かさを覚える気持ちも、失われてはいなかった。