第9章 林間合宿
入浴時間を告げる声が響く頃には、食堂の賑わいも少しずつ落ち着き始めていた。
おもちは女子たちより一足先に脱衣場へ向かい、汚れた制服を脱いだ。森を駆け抜けたせいで、身体には汗と土埃がまとわりついている。
浴室に入ると、まずは丁寧に身体を洗った。
温かな湯で汗を流し、肌に残った土埃を落としていく。腕や脚には小さな擦り傷がいくつか残っていたが、幸い、どれも大したものではなかった。
最後に髪を洗い、長い黒髪をまとめる。
ようやく身体のべたつきが消えると、彼女はほっと息をついた。
そして、露天風呂へと足を向ける。
ちゃぷん、と小さな水音が夜の空気に溶けた。
「……はぁ」
湯に身を沈めると、知らず知らずのうちに強張っていた身体から力が抜けていく。
昼間の森では、息を切らしながら走り続けた。個性が使えないことを意識しないように、仲間たちの足を引っ張らないようにと、必死だった。
今になって、ようやく自分が疲れていたことを実感する。
彼女は背もたれに身体を預け、ゆっくりと夜空を見上げた。
都会ではなかなか見られない、澄み渡った星空。
木々の隙間から覗く星々は、まるで夜の帳に散りばめられた宝石のように輝いていた。
「綺麗……」
自然と、声が零れる。
頬を撫でる夜風が心地よい。湯の温もりに包まれながら、彼女はしばらく何も考えず、ただ星を眺めていた。
やがて、湯に浸かった長い黒髪が肩や背中に張り付いていることに気づく。
彼女は濡れた髪を片手でそっとかき上げた。
白い首筋が露わになり、雫が細い肩を伝って湯の中へ落ちていく。
その仕草は、本人にとっては何気ないものだった。