• 小
  • 中
  • 大
  • テキストサイズ

光の裏側で、君と ※ヒロアカの爆豪寄り

第9章 林間合宿


「……しーっ」
声にならないほど小さな仕草。

彼女の指先が、そっと爆豪の唇に触れた。

ほんの一瞬。
けれど、爆豪にとっては、時間が止まったような感覚だった。

柔らかな指先の感触。

すぐ目の前にある、彼女の瞳。

いつもは冷静で、何を考えているのか分からない彼女が、今だけは秘密を共有する悪戯っ子のように笑っている。

その笑顔が、ひどく無防備に見えた。

爆豪は息を止めた。

何か言わなければならない。
タバコのことも。身体のことも。勝手に引っ張ってきたことも。
言いたいことなら、山ほどある。

なのに、喉が動かなかった。

彼女の唇が、ほんのわずかに弧を描く。
まるで、二人だけの秘密を楽しんでいるかのように。

「……っ」

爆豪は顔を背けた。


耳の先が、じわじわと熱くなっていく。
くそ!
なんでこんなときに。
よりによって、こいつは――。


「……いねえみたいだな!」
突然、切島の声が響いた。

「外には出ていないのかもしれないな」
飯田が反応する。

二人の足音が、再び遠ざかっていった。

それを確認した彼女は、ようやく安堵したように息を吐いた。

「……ふぅ。危なかった」

彼女は爆豪の口元から指を離し、悪戯が成功した子どものように、くすりと笑った。

「ありがとう、爆豪くん。助かったわ」

そう言って、彼を見上げる。


爆豪は、まだ彼女を見られずにいた。

「……てめぇ」

「なあに?」

「なあに、じゃねぇだろうが……!」

声を荒らげようとして、思わず声量を抑える。
彼女は不思議そうに首を傾げた。

「どうしたの?」

「どうしたもこうしたもあるか!!」

小声で怒鳴るという、器用なのか不器用なのか分からない芸当を披露した爆豪に、彼女はとうとう笑いをこぼした。

「ふふっ、ごめんなさい」

「笑ってんじゃねぇ!!」

「だって……爆豪くん、面白いんだもの」

その言葉に、爆豪は絶句した。

面白い?
俺が?
こいつ、今、自分が何を言っているのか分かってんのか。
彼女はまだ、楽しそうに笑っている。
/ 603ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp