第9章 林間合宿
「いったぁ……!」
上鳴が地面に仰向けになったまま呻いた。
「いきなりこれは聞いてねぇぞ……!」
「初っ端からこれかよ…!」
切島が上鳴を引っ張り起こす。
「みんな、怪我はないか!?」
飯田が周囲を確認しながら声を張った。
おもちは膝についた土を払い、ゆっくりと立ち上がった。
擦り傷はあるものの、大きな怪我はなさそうだ。
「私は大丈夫。みんなは?」
「こっちも大丈夫だよ!」
麗日が返事をする。
「……って、あれ?」
緑谷が顔を上げた。
森の奥から、何かが近付いてくる。
地面を踏み鳴らす、重々しい音。
ずしん、ずしん、と響く振動に、木々の葉が揺れた。
「……何だ、あれ?」
轟が目を細める。
木々の間から現れたのは、巨大な獣の姿をした何かだった。
全身は土くれで形作られ、太い四肢が地面を踏みしめている。岩のような胴体に、鋭く尖った爪。頭部には角のような土の塊が突き出していた。
一体だけではない。
その後ろからも、さらに大きさの異なる魔獣たちが次々と姿を現した。
「うそでしょ……!?」
芦戸が目を見開く。
「な、何あれ!?」
「ピクシーボブの個性だ!」
緑谷がすぐに気付いた。
「土を操作して、魔獣の形に具現化してるんだ……!」
その言葉を裏付けるように、森の奥からピクシーボブの声が響いてきた。
「さあ、ここからが本番よ!その子たちをかわしながら、合宿所を目指しなさい!」
「かわしながらって……!」
上鳴が悲鳴を上げた。
魔獣の一体が、低く唸るような音を立てた。
そして――
地面を蹴り、A組へ向かって突進してきた。
「散れ!!」
爆豪の怒号が飛ぶ。
生徒たちは一斉に左右へ飛び退いた。
直後、魔獣の巨体が彼らのいた場所を薙ぎ払い、地面を大きく抉った。土くれが飛び散り、細かな砂が視界を覆う。
「うわっ、危ねぇ!」
「こいつ、見た目以上に速いぞ!」
切島が身構える。
轟は右手を構え、足元の状況を確かめながら魔獣の動きを見極めていた。
爆豪も両手を鳴らし、今にも爆発を放とうとしている。