第9章 林間合宿
前の席では、麗日が口元を押さえていた。
「……な、なんか、こっちまで照れるなぁ////」
蛙吹も、ぱちぱちと瞬きをする。
「歌っている時のおもちちゃん、いつもと雰囲気が違うわね」
「うむ!実に堂々としていて、素晴らしい歌唱だ!」
飯田は真面目に感想を述べていたが、その耳もほんのり赤くなっていた。
青山に至っては、胸元に手を当て、うっとりとした表情を浮かべている。
「オーラだけじゃない……歌声まで、こんなに魅力的だなんて……!」
そして、男子たちはというと。
それぞれが、妙な沈黙に陥っていた。
彼女が歌うたび、目が離せなくなる。
まるで、自分に向かって歌いかけられているような気がしてしまうのだ。
もちろん、彼女は誰か一人を見つめているわけではない。マイクを手に、時折画面を確認しながら、ただ楽しそうに歌っているだけだ。
それなのに、柔らかな声で紡がれる恋の歌と、少し照れながらも一生懸命に歌う姿が、妙に胸に響く。
(((……もし、あれを自分に向かって歌われたら)))
そんな想像が頭をよぎり、慌てて打ち消す者もいた。
「……おい、てめぇら。何、黙りこくってんだ」
爆豪が呆れたように言った。
だが、その声にもいつもの勢いはなかった。
彼自身、歌い始めてからほとんど口を開いていなかったのだ。
腕を組み、窓側に背を預けながら、彼女の歌声を聴いている。
普段のおもちは、何を考えているのか分からない。
冷静で、頭の回転が速く、誰に対しても一定の距離を保っている。時折見せる笑顔も、どこか余裕があって、こちらの調子を狂わせるものだった。
それが、今は違う。
歌詞に合わせて少し恥ずかしそうに笑い、声を弾ませ、時には照れ隠しのように視線を落とす。
こんなツラもすんのか。
爆豪は、初めて知った一面を目に焼き付けるように、彼女を見つめていた。