第3章 USJ襲撃事件編
「……」
一瞬、車内が静まり返った。
そして、何人かが一斉に振り返る。
「……え?」
「……」
「…………」
全員の視線が、轟の隣へ集中する。
そこには、轟の肩に頭を預けて、静かに眠る彼女。
「……」
「…………」
「………………」
上鳴が小さく呟いた。
「……美男美女席じゃん」
「それな」
切島も目を丸くする。
「なにこれ……絵になりすぎでしょ」
耳郎も思わず後ろを見る。
八百万も驚いたように目を瞬かせた。
「まぁ…////とても……綺麗ですわ」
麗日は頬を赤くする。
「なんか……映画みたいやわ……」
蛙吹までじっと見つめている。
「綺麗ね」
そして、男子たち。
「……」
「……」
「……」
全員、微妙に顔が赤い。
理由は単純だった。
彼女は普段から美人だ。
だが、起きているときは鋭い。落ち着いていて、隙がない。
だからこそ、眠っている姿は、別人のようだった。
「寝顔、めちゃくちゃ綺麗じゃん……」
上鳴が呟く。
「ちょっと、声デカいよ」
耳郎が肘で小突く。
「いや、だって……」
「起こすなよ」
轟が淡々と言う。
その言葉に、なぜか全員が黙った。
「……」
「……轟、なんか自然だな」
切島が小声で言う。
「何が?」
「いや……なんでもねぇ」
轟は意味が分からないという顔をした。
「疲れてるんだろ」
その一言に、少しだけ空気が変わる。
彼女がここまで眠り込むのは、珍しい。
いつも周囲を観察している彼女が、誰にも気づかれないほど深く眠っている。
轟は再び窓の外を見る。
「……今日は寝かせてやればいい」
その言葉に、誰も反論しなかった。
ただ一人、彼女だけが何も知らずに眠っていた。
公安の仕事で積み重なった疲労も、雄英で過ごす日々も、そして、自分がクラスメイトたちからどう見られているのかも。
「……すぅ……」
バスの揺れに合わせて、彼女の頭がほんの少し轟の肩へ沈む。
轟は動かなかった。
そして前方では、
「……なあ」
上鳴が小声で言う。
「起こしたら殺されるかな」
「起こさないほうがいいだろ」
切島が即答した。
「……だよな」
誰もが、もう一度だけ後ろを見る。