第3章 USJ襲撃事件編
そんな会話を聞きながら。
彼女は後方の席で、窓の外をぼんやり眺めていた。
眠い。
――少しだけ。
そう思って、目を閉じる。
昼間は雄英高校の生徒。
そして夜は、公安から回される裏の仕事。
人員不足を理由に、夜の街へ潜入しての情報収集や監視まで続いていた。
眠っている時間は、ここ最近ほとんどない。
けれど、それを誰にも言うつもりはなかった。
バスの揺れが、妙に心地よかった。
「……」
意識が、ゆっくり遠のいていく。
彼女の隣には轟。その前には爆豪と耳郎。
バスの右後方に彼女は座り、そんな配置だった。
しばらくして
「……」
轟が、肩に何かが触れたのを感じた。
ぽすん。
温かい体温。
「……?」
横を見る。
彼女が眠っていた。
長い髪が頬にかかり、規則正しい呼吸をしている。
普段の鋭い目つきも消えている。
あまりにも無防備だった。
轟は少しだけ目を見開いた。
「……寝てる」
起こそうかと思った。
だが、
「……」
寝顔が、妙に綺麗だった。
起こすのがもったいない。
轟はそのままにした。
そして何事もなかったように、窓の外へ視線を戻す。
しばらくすると、前方から大きな笑い声が聞こえてきた。
「だからさ――!」
「マジで!?」
「それで爆豪が――!」
車内は盛り上がっている。
轟は一度だけ後ろを確認した。
彼女はまだ眠っている。
そして、前方へ向かって言った。
「……静かにしてくれ」
「え?」
「さとうが寝てるんだ」
あまりにも普通の口調だった。