第8章 夏休み
「せっかちな子だねえ」
そう言いながらも、彼女の表情は先ほどよりも真剣になった。
「昨日、彼女が病院で検査を受けたことは事実だよ。ただし、詳しい検査結果については、本人の許可なく、あたしからあんたたちに話すわけにはいかない」
「じゃあ、なんで倒れた」
爆豪の声が鋭くなる。
「それは今、確認しているところさ。少なくとも、今日の様子を単なる疲労だと決めつけるわけにはいかないね」
その言葉に、麗日が息を呑んだ。
「単なる疲労じゃないって……どういうことですか?」
「今は、まだ断定できないということだよ。日差しや運動による負担も考えられる。けれど、彼女には以前から気になる症状がある。今日の件と関係している可能性も含めて、慎重に様子を見る必要があるんだ」
「以前から……?」
切島が眉を寄せる。
「おい、待てよ。気になる症状ってなんだ? あいつ、そんなこと一言も……」
上鳴の言葉が途切れた。
そうなのだ。
彼女はいつだって、何でもないような顔をしていた。
授業でも訓練でも、周囲をよく見て、誰かが困っていれば自然に手を貸す。自分が苦しいときでさえ、涼しい顔で笑ってしまう。
だからこそ、誰も気づかなかったのかもしれない。
彼女自身が、何かを隠していたのだとしたら。
「……あいつ」
爆豪が吐き捨てるように呟いた。
拳が、ぎゅっと握り締められる。
『大丈夫よ。少し、疲れただけ……』
倒れる直前の彼女の声が、耳の奥によみがえった。
あのとき、確かに彼女は笑おうとしていた。
自分を安心させるためなのか。それとも、誰にも心配をかけたくなかったのか。
どちらにしても、腹が立った。
なぜ、何も言わない。
なぜ、ひとりで抱え込む。
「……クソッ」
「爆豪」
リカバリーガールの声が、彼の思考を遮った。
「心配なのはわかるよ。けれど、今は彼女を休ませておやり。目を覚ましたら、本人から話を聞くこともできるだろう」
「……わかってる」
そう答えながらも、爆豪は動かなかった。
ベッドの脇に立ち、彼女の顔を見下ろし続ける。