第8章 夏休み
クラスメイトだから。
それだけで十分な理由のはずだった。
だが、彼女が倒れた瞬間、胸の奥を乱暴に掴まれたような感覚があった。
あの、何を考えているのかわからない女。
いつも涼しい顔で人を観察し、時折、こちらの想像を超える言葉を口にする女。
自分のことなど、ほとんど話さないくせに、誰かが困っていれば当たり前のように手を差し伸べる。
そんな彼女が、誰にも助けを求めず、ひとりで倒れた。
それが、どうしようもなく腹立たしかった。
「……クソッ」
爆豪は濡れた髪を乱暴にかき上げた。
昨日の検査。
腕に残された採血の痕。
そして、さっきまで何事もなかったかのように笑っていた彼女。
頭の中で、いくつもの疑問が渦巻いていた。
――何があった。
――何を抱え込んでやがる。
――どうして、何も言わねえ。
答えはひとつも見つからない。
ただ、彼女の青白い顔だけが、何度も脳裏によみがえった。
彼は、自分でもまだ名前をつけられない感情を片付けられないでいた。