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光の裏側で、君と ※ヒロアカの爆豪寄り

第8章 夏休み


「……何やってんだ、お前」

顔を上げようとしたものの、うまく焦点が合わない。


赤みがかった瞳が、彼女の顔をじっと見つめていた。
爆豪だった。

先ほどまで競泳で勝ち誇っていた彼は、いつの間にかプールサイドへ戻ってきていたらしい。

「……爆豪くん?」

「顔色、悪ィぞ」
彼の眉間に深い皺が刻まれる。

いつもの苛立った表情とは、どこか違った。
おもちは何でもないことのように微笑もうとした。

「大丈夫よ。少し、疲れただけ……」

「どこが大丈夫なんだよ」
即座に返された言葉に、彼女は口を閉じた。

爆豪の視線が、彼女の青白い顔から、フェンスを握り締める指先へと移る。
その手が、かすかに震えていた。

「……おい、立てるか?」

いつもなら、余計なお世話だと返していただろう。
けれど今は、そんな強がりを口にする余裕すらなかった。

彼女は答えようとして、唇を開く。

「わた、し……」
言葉が続かない。

その瞬間、身体がぐらりと傾いた。

「おい!!」
爆豪が咄嗟に腕を伸ばす。

倒れかけた彼女の身体を、彼は両腕で支えた。
突然のことに、周囲の喧騒がぴたりと止まる。


「おもちちゃん!?」


葉隠の悲鳴に近い声が響いた。

「えっ、どうしたん!?」

麗日が駆け寄り、八百万もすぐさま表情を引き締める。
爆豪は彼女を支えたまま、険しい顔で呼びかけた。

「おい、聞こえてんのか! しっかりしろ!」

彼女は薄く目を開けた。
目の前にいる爆豪の顔が、ぼんやりと滲んでいる。

「……ごめん、なさい……」

「謝ってんじゃねえ!!」
怒鳴るような声。
けれど、彼女の身体を支える腕は、驚くほど慎重だった。

「八百万! 保健室に連絡しろ! 誰か先生を呼んでこい!」

「わかりましたわ!」
八百万がすぐに指示を飛ばし、飯田も教師を呼ぶために走り出す。
爆豪は彼女を支えながら、顔を覗き込んだ。

「おい。目ぇ閉じんな」
その声が、いつもより近く聞こえた。

彼女は何かを答えようとした。
けれど、唇から言葉がこぼれることはなかった。
意識が、ゆっくりと遠ざかっていく。
最後に感じたのは、自分を支える腕の確かな温もりと。


「……クソッ、しっかりしろよ」


すぐそばで聞こえた、爆豪の焦った声だった。
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