第8章 夏休み
日が傾き始め、プールサイドに長い影が落ちるころ。
女子たちの賑やかな時間は、いつしか男子たちの勝負へと移り変わっていた。
「よっしゃあ!せっかくプールに来たんだ。最後にひと勝負しようぜ!」
切島が拳を突き上げると、上鳴もすかさず乗っかった。
「いいね!普通に泳ぐだけじゃつまんねえし、個性ありで競泳しようぜ!」
「個性を使用した競泳か……。面白そうだな」
轟が淡々と応じる。
「よし、決まりだな!審判は誰にする?」
「それなら、わたくしが引き受けますわ」
八百万が名乗りを上げた。
「ルールは公平に。スタートの合図とともにゴールを目指してくださいませ。ただし、他の生徒への妨害は禁止ですわよ」
「おう!」
男子たちはプールのスタート地点へと集まった。
その様子を、プールサイドでタオルを肩に掛けたおもちが眺めていた。
「位置について――」
八百万が手を挙げる。
「よーい……スタート!」
合図と同時に、水しぶきが上がった。
……はずだった。
ドォンッ!!
爆発音がプールサイドに響き渡る。
「はああああ!?」
誰かの叫び声が上がった。
爆豪は水に入るどころか、両手から爆発を起こして空中を一直線に飛んでいた。
そのまま勢いを落とすことなく、あっという間にゴールへ到達する。
「っしゃあ!!」
爆豪が着地し、勝ち誇ったように拳を握った。
「おい爆豪!! それ、泳いでねえだろ!!」
切島が思わず叫ぶ。
「うるせえ!! ゴールしたんだから文句ねえだろうが!!」
「いや、競泳の意味ねえって!!」
「ふむ……確かに、泳ぐという競技の趣旨からは外れているように思うが」
飯田が腕を組んで考え込む。
「ならば、俺も試してみるか」
轟がプールの水面に手をかざした。
次の瞬間、氷が水面を走る。
「おいおいおい!?」
轟は自ら作り出した氷の上を滑るように進み、あっという間にゴールへと到達した。
「……よし」
「轟もかよ!!」
今度は飯田がエンジンを吹かし、凄まじい速度で水面を駆け抜ける。
「合理的な方法で最速を目指す!これも立派な競争だ!」
「いや、もう何でもありじゃねえか!!」
瀬呂のツッコミが響く。
プールサイドは大騒ぎだった。