第2章 雄英高校入学編
玄関先には報道陣が押し寄せており、雄英バリアを突破していた。
生徒たちは動揺し、教師たちも対応に追われる。
「落ち着いてください!」
「こちらへ!」
「勝手に撮影しないでください!」
混乱が広がっていく。
彼女は廊下の端から状況を見つめていた。
「……ひどい混乱」
生徒の動線。
逃げ道。
一瞬で頭の中に情報が並んでいく。
だが――
「皆さん、こちらです!」
大きな声が響いた。
飯田だった。
「慌てずに、指示に従ってください! 大丈夫、校内にマスコミは侵入してきていません。先生たちが対応してくれています!」
腕を大きく振り、混乱する生徒たちを誘導していく。
「そちらは通路を塞がないでください!」
「落ち着いて!」
飯田は、ただ声を上げているだけではない。
生徒の流れを見ている。混乱の中心を避け、人を安全な場所へ誘導している。生徒たちには明確な方向を示している。
――なるほど。
彼女はそこで初めて、飯田天哉という人物を改めて観察した。
「……委員長ぽい」
ぽつりと呟く。
その頃、緑谷も飯田の姿を見ていた。
そして騒動が収まったあと。
緑谷は飯田に声をかけた。
「飯田くん」
「何だ?」
「委員長……飯田くんがやるべきだと思う」
「え?」
飯田が目を見開く。
「僕は、さっきのことで分かったんだ。飯田くんが一番、みんなのことを見てた」
「しかし……僕は……」
「だから」
緑谷は笑った。
「僕は飯田くんを推薦する」
教室が静かになる。
そして彼女も。
「私も」
飯田が驚いた顔でこちらを見る。
「君まで……?」
「うん」
彼女は微笑む。
「さっきの騒動を見て、分かったから」
「……何がだ?」
「あなたは、人を動かすだけじゃない。混乱している人を見つけて、安心させながら動かせる」
彼女は少しだけ考えてから続けた。
「それは、委員長に必要な能力だと思う」
飯田はしばらく黙っていた。やがて、眼鏡を押し上げる。
「……分かった」
そして背筋を伸ばした。
「この飯田天哉、皆の期待に応えられるよう、全力を尽くそう!」
教室から拍手が起こる。
最初は観察対象だったクラスメイトたち。
けれど、少しずつ彼らの「個性」だけではない部分まで、見えるようになってきていた。