第8章 夏休み
彼女は扉を開け、室内へ視線を向けた。
「お茶くらい出すよ。上がっていく?」
「えっ、いいの?」
「何、その反応」
「いやぁ、君から誘ってもらえるとは思わなくて」
「お礼をするだけよ。変な期待はしないで」
「はいはい。お邪魔しまーす」
軽い足取りで入ってくるホークスに、彼女は小さくため息をついた。
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リビングに入ると、彼女は買い物袋をキッチンへ運び、食材を冷蔵庫にしまった。
その間、ホークスはソファに腰を下ろす。
「相変わらず、綺麗にしてるね。もっと仕事と学業に追われて、部屋が荒れてるかと思ってた」
「そう?これでも、荒れてる方よ」
彼女は冷たい麦茶を二つ用意し、一つを彼に差し出した。
「はい」
「ありがと」
ホークスはひと口飲み、満足そうに息をつく。
「生き返るー。今日、暑すぎない?」
「病院からここまで歩いただけで疲れたわ」
「……病院?」
彼の表情がわずかに変わった。
「定期的な検査よ。個性がまだ戻らないから、改めて調べてもらってきたの」
「そっか。何か分かった?」
「身体に明らかな異常はないそうよ。ただ、個性が使えない原因はまだ分からないから、個性カウンセリングと精密検査を受け直したわ。結果は一週間後」
「一週間か……」
ホークスはグラスをテーブルに置いた。
「君が個性を使えなくなるなんて、想像もしてなかった」
「私もよ」
彼女は苦笑した。
「それに、先生から少し気になる話も聞いたの」
「気になる話?」
「昔、父が受けさせてくれた個性カウンセリングについて。個性の本質を伏せて、実際とは違う内容で申請していた可能性があるらしいわ」
ホークスの表情から、笑みが消えた。
「……お父さんが?」
「まだ可能性の話だけどね。何かが分かったわけじゃない」
彼はすぐには返事をせず、彼女の様子をうかがった。
「君は、どう思ってる?」
「分からない。父が何を考えていたのかも、何を隠していたのかも」
彼女はグラスを見つめた。