第8章 夏休み
精密検査を終えて、病院を出ると、夏の熱気が肌を包み込んだ。
彼女は日差しに目を細めながら、携帯電話を取り出した。ちょうどその時、メッセージの通知が届く。
送り主は芦戸三奈だった。
『ねえねえ!明日、学校のプールで遊ばない!?』
続けて、メッセージが届く。
『日光浴を名目に女子みんなでプールを予約したんだ!』
『せっかくの夏休みだし、みんなで遊ぼうよ!』
『絶対来てね!!』
いかにも芦戸らしい、明るく勢いのある文章だった。
彼女は画面を見つめ、ふっと目を細める。
夏休みに入ってからというもの、個性のことばかり考えていた。いつ戻るのか。自分の身体に何が起きているのか。そして、父が残した記録には何が書かれているのか。
考え始めれば、きりがない。
けれど、明日はクラスの女子たちと過ごせる。
それだけで、少し気持ちが軽くなった。
『誘ってくれてありがとう。明日、楽しみにしてるね』
返信すると、すぐに既読がついた。
『やったー!!待ってるからね!!』
「……明日の楽しみができたわね」
彼女は小さく笑い、携帯をしまった。
その後、スーパーに立ち寄り、夕食の食材と翌朝に必要なものを買い揃える。買い物袋を手に、ゆっくりと自宅へ向かった。
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自宅の玄関前に着いた時、見慣れた人影が目に入った。
金色の髪に、赤い翼。
壁にもたれかかっていた男は、彼女に気づくと、いつもの気安い笑顔を浮かべた。
「やぁ!」
「……ホークス?」
「おかえり。待ってたよ」
「何してるの、こんなところで。連絡くらいしてよ」
「連絡したら、待ち伏せの楽しみが減るでしょ?」
「その楽しみ、理解できないんだけど」
彼女は呆れながらも、懐かしさを感じていた。
ホークスとは長い付き合いだ。今ではトップヒーローとして多忙な日々を送っている彼も、彼女の前では昔と変わらない調子だった。
彼女は買い物袋を持ち直し、玄関の鍵を取り出す。
「そういえば、保須の時は助かったわ。病院まで運んでくれたでしょう?ちゃんとお礼を言えていなかったから」
「気にしなくていいよ。あの状態の君を放っておけるわけないでしょ」
「それでも、助けてもらったのは事実だから」