第7章 期末テスト編
オールマイトが腕を組み、いつもの明るい声で話し始める。
「諸君、すでに試験内容について情報を得ている者もいるかもしれないが――」
彼女の表情が、わずかに強張った。
「今回の試験では、当初予定していた内容を変更することになった!」
「…………は?」
一瞬、誰も反応できなかった。
「「「えええええええっ!?」」」
A組全員の声が、訓練場に響き渡った。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
上鳴が慌てて手を挙げる。
「変更って、どういうことですか!?」
「実はね」
根津がにこやかに説明を始めた。
「試験内容の一部が、事前に漏れてしまったようなんだ。公平性を保つため、急遽、試験内容を変更することになった」
「誰だよ情報漏らしたの!?」
「知らねぇよ!」
上鳴と芦戸が顔を見合わせる。
「えっ、じゃあロボットを倒すんじゃないの!?」
「そういうことになるね」
根津は穏やかに頷いた。
「詳細はこれから説明するよ」
生徒たちの間に、動揺が広がっていく。
「嘘だろ……」
「せっかく対策考えてきたのに……!」
「いや、そもそも俺たち、まだ何も対策してねぇんだけど!?」
切島の叫びに、上鳴が悲鳴を上げる。
そんな中、おもちは静かに目を閉じた。
(…………)
先ほどまで胸の中にあった、わずかな希望。
個人戦ならば。
相手が機械ならば。
自分一人で完結する試験ならば。
その淡い期待は、ものの数秒で打ち砕かれた。
(……そう来るのね)
彼女はゆっくりと目を開けた。
表情は、いつもどおり落ち着いている。
だが、その内心では、珍しくため息をついていた。
(……これ、今日は厄日かな?)
個性は使えない。
試験内容は不明。
しかも、予定していた対策は白紙に戻った。
ここまで条件が揃うと、もはや笑うしかない。
彼女はヒーローコスチュームの手袋を軽く握り直した。
――それでも、試験は受けなければならない。
逃げるわけにはいかないのだから。
「では、これから試験内容を発表する!」
オールマイトの声が、再び訓練場に響いた。
生徒たちが息を呑む。
彼女もまた、静かに顔を上げた。
(……さて。今度は、何をさせられるのかしら)
その胸の奥で、不安と警戒心が再び顔をもたげていた。