第7章 期末テスト編
期末テスト当日
筆記試験を無事に終えたA組の生徒たちは、実技試験の会場となる訓練場へと集まっていた。
ヒーローコスチュームに身を包み、目の前に広がる巨大な施設を見上げる。
TDL――セメントスの個性によって作り上げられた、実戦さながらの訓練場だった。
「うわぁ……相変わらず、すげぇな!」
切島が感嘆の声を上げる。
「これ、本当に先生一人で作ったのかよ……」
上鳴も、入り組んだ建物や道路を見回して目を丸くしていた。
「セメントス先生の個性、こういうとき本当に便利よね」
芦戸が感心したように呟く。
その賑やかな声を聞きながら、おもちは静かに訓練場を見渡していた。
いつもと同じヒーローコスチューム。
腰に備えた装備も、身体に馴染んでいる。
見た目だけなら、何も変わっていない。
(……本当に、突破できるのかな)
胸の奥に、じわりと不安が広がった。
個性が使えなくなってから、数日。
身体に大きな異常があるわけではない。歩けるし、走れる。頭も普段どおりに働いている。
それでも、いざ個性を使おうとすると、何も起こらない。
まるで、自分の身体の一部だったものが、突然失われてしまったかのようだった。
これまで、どんな状況でも個性を使うことを前提に戦術を組み立ててきた。
相手の動き、周囲の地形、味方の位置。
あらゆる情報を集め、状況を支配する。
それが彼女の戦い方だった。
だが、今は違う。
個性を使えない自分に、何ができるのか。
実技試験の内容次第では、これまで築き上げてきた戦術の大半が通用しない可能性もある。
ましてや、雄英の教師たちが相手なら、付け焼き刃の対応でどうにかなるとは限らない。
(……落ち着いて。まだ、内容も分からないんだから)
彼女は小さく息を吸い、ゆっくりと吐いた。
まずは情報を集める。
話はそれからだ。
そう考えたとき、少し離れた場所から、上鳴と芦戸の話し声が聞こえてきた。