第2章 雄英高校入学編
戦闘訓練が終わり、教室へ戻る。
それぞれが席につき、先ほどの訓練について話し始める。
「じゃあ、次は委員長決めるぞ」
相澤の一言で、教室の空気が変わった。
「委員長……!」
飯田が勢いよく立ち上がる。
「私はこのクラスをより良い方向へ導くため、委員長に立候補します!」
「飯田くん、早っ!」
緑谷が驚く。
その後も何人かが手を挙げた。
「俺もやる!」
「私も!」
「委員長って、なんかカッコいいよな!」
教室が一気に賑やかになる。
彼女はその様子を眺めながら、静かに考えていた。
――委員長。
クラスをまとめる役割。
情報伝達
判断
周囲の状況把握
緊急時の指示
「……」
悪くない役職だ。
ただ、自分から立候補する理由はなかった。
公安から与えられている任務は、あくまでこのクラスの観察と情報収集。
目立ちすぎる役割は、むしろ避けたい。
そう考えていた。
「それじゃあ、投票にする」
紙が配られる。
彼女は淡々と名前を書いた。
そして集計。
「一票目――緑谷出久」
「はい!」
緑谷が勢いよく返事をする。
「二票目、八百万百」
「ありがとうございます」
次々と名前が読み上げられていく。
そして――
「……さとう!!」
「え?」
本人が顔を上げる。
「おもちちゃん?」
クラスの何人かが振り返る。
「もう一票」
「……」
また、さらに。
「……さとう」
「……私?」
思わず自分を指差す。
予想外だった。
彼女はほとんど発言していない。
積極的にクラスをまとめた覚えもない。
なのに、票が入っていく。
「結構入ってるじゃん」
麗日が笑う。
「だって、今日すごかったもん」
「そうそう!」
「戦況を見るの、めちゃくちゃ上手かったし」
「怪我した奴のところにも真っ先に行ってたよな」
彼女は瞬きをする。
「……それ?」
「それだけじゃないですわ」
八百万が穏やかに言った。
「周囲をよく見ていらっしゃいますもの。誰が困っているのか、誰が動くべきなのか……判断がとても早いです」
蛙吹も頷く。
「困ってる人を放っておかないところ、委員長向きだと思うわ」
「……」
彼女は少しだけ眉を寄せた。