第7章 期末テスト編
「ねーねー、君一人?」
背後から声がした。
彼女は振り返る。
そこにいたのは、大学生くらいの男が三人。
一人がにこやかに笑いながら、彼女の顔を覗き込んでいた。
「てか、めっちゃ可愛いね!誰か待ってるの?」
「待ち合わせです」
彼女は穏やかに答え、視線をスマートフォンへ戻した。
「えー、彼氏?」
「友達です」
「じゃあ、来るまで俺らと話そうよ。暇でしょ?」
「いえ、大丈夫です」
柔らかい口調で断る。
これで終わると思った。
しかし、男たちは引き下がらなかった。
「そんな冷たくしないでよ。せっかく声かけたんだからさ」
「このあと予定あるの? よかったら一緒に遊びに行かない?」
「俺ら大学生だし、奢るよ?」
「……すみません。待ち合わせをしていますので」
彼女は少しだけ身体の向きを変え、距離を取った。
しつこい。
相手を刺激せずに断るなら、同じ言葉を繰り返すのが無難だろうか。
それとも、店内に入ってしまったほうがいいか。
(……面倒だな)
彼女は内心で小さくため息をついた。
相手に敵意があるわけではない。だが、こちらの意思を尊重する気もなさそうだった。
三人のうち一人が、彼女のトートバッグからちらりと見えた教科書に目を向けた。
「それ、教科書? え、もしかして高校生?」
「そうです」
「うわぁ、マジか!どこの高校??何年生?」
「……それ答える必要あります?」
思わず、いつもの調子が出た。
男たちが一瞬、顔を見合わせる。
「いや、そんな警戒しなくてもいいじゃん」
「俺ら、別に怪しいもんじゃないし」
(怪しいかどうかを決めるのは、あなたたちではないのだけれど)
口には出さず、彼女はどう切り上げようかと考えた。
そのとき
「……あ?」
少し離れた場所から、聞き慣れた声が響いた。
「おい、切島。あそこ、なんか揉めてねぇか?」
「ん? どこだ?」
待ち合わせ場所へ向かっていた爆豪と切島は、日陰に人だかりができているのに気づいた。
若い男が三人。
その前に、短い白いシャツにショートパンツという格好の女子が一人。
どうやら、男たちが彼女を囲むようにして話しかけているらしい。