第7章 期末テスト編
その様子を眺めていた彼女は、切島へ向き直る。
「いいよ。私でよければ、一緒に勉強しようか」
「マジか! 助かる!」
切島の顔がぱっと明るくなった。
「法律学は、ただ条文を丸暗記するより、どういう状況で適用されるのかを考えたほうが覚えやすいと思う。具体例を使って整理してみようか」
「おお! そういうの、ありがたい!」
「もちろん、私も全部を完璧に説明できるわけじゃないけどね」
「いやいや、中間2位の人が何言ってんだよ!」
切島が大げさに驚く。
「俺、あの順位見てびっくりしたんだからな! 体育祭じゃあんなに強ぇし、勉強もできるし。ほんと、何でもできるんだな!」
「そんなことないよ。苦手なこともあるから」
彼女はそう答えながら、ふとノートの端に目を落とした。
――今の自分にできないことも、ある。
それでも、誰かに教えることならできる。
個性を使わずとも、誰かの力になれることはあるのかもしれない。
そんな考えが、ほんの一瞬だけ胸をよぎった。
「じゃあさ、週末とかどうだ? 学校じゃ時間も限られるし、ファミレスで勉強会とか!」
「いいね。私もそのほうが落ち着いて教えられると思う」
「よっしゃ!」
切島が拳を握った、そのとき。
「……待てや」
低い声が割って入った。
二人が振り返ると、爆豪が腕を組んでこちらを睨んでいた。
「お前、何勝手に話進めてんだ」
「え? 何が?」
「週末に勉強するんだろうが」
「そうだけど?」
「だったら俺も行く」
一瞬、切島が目を丸くした。
「えっ、お前も来てくれんの?」
「悪ィか!」
「いや、だってお前、法律学得意だったっけ?」
「……うるせぇ」
爆豪の眉間に、深い皺が刻まれる。
実際、法律学は得意ではなかった。
戦闘訓練や実技なら、誰にも負けるつもりはない。必要な知識を覚えることもできる。
だが、細かな条文や制度の違いを問われると、どうにも調子が狂う。
特に、ヒーロー活動に関する法規は、似たような規定が多く、覚えたつもりでも選択肢の細かな違いで引っかかることがあった。
だからこそ、切島に教えるついでに、自分も確認しておきたい。
――などと、素直に言うつもりは毛頭なかった。
「俺も確認しとくことがあるだけだ。勘違いすんじゃねぇぞ」
「へえー?」
切島がにやにやと笑う。