第7章 期末テスト編
期末テストまで、残り一週間を切っていた。
雄英高校の教室では、授業の合間にもテストの話題が飛び交っている。
「やっべぇ! もう一週間もねぇじゃん!」
「今さら焦っても遅いって、上鳴」
「芦戸、それ言わないで! 俺の精神が死ぬ!」
「赤点取ったら補習だぞ。実技もあるんだから、今のうちに勉強しとけよ!」
切島の言葉に、上鳴が机に突っ伏した。
「うわぁぁぁ! 補習だけは嫌だぁ!」
そんな騒がしい教室の中、彼女は一人、ノートに視線を落としていた。
筆記試験については、それほど心配していない。
中間テストでは2位。これまで積み重ねてきた知識と記憶力があれば、今回も十分に対応できるはずだった。
特に法律学やヒーロー関連の法規については得意分野だ。ヒーロー活動における権限、救助活動の責任、個性使用に関する規定。そうした知識は、彼女にとって比較的馴染み深い。
問題は、実技試験だった。
(……個性を使えない状態で、どうやってクリアするか)
期末試験の実技内容は、まだ明かされていない。
相手が教師なのか、何らかの課題をこなす形式なのか。それによって難易度も対策も大きく変わる。
個性が使えないことを知られずに乗り切る方法はあるのか。
いや、そもそも今の自分に、どこまでできるのか。
考えたところで、答えは出なかった。
彼女は小さく息を吐き、ノートを閉じる。
「なあ、おもち!」
顔を上げると、切島が机の横に立っていた。
「どうしたの?」
「ちょっと頼みがあるんだけどさ。法律学、教えてくんねぇ?」
「法律学?」
「ああ。俺、あの辺がどうも苦手でさ。覚えること多いし、条文とか似たようなのばっかりで、頭ん中ごちゃごちゃになっちまうんだよ」
切島は困ったように頭を掻いた。
「爆豪に聞いたら、『教え殺したろか!』って言われてさ……」
「ふふっ」
彼女は思わず笑った。
「ああ、言いそうね」
「だろ!? いや、教えてくれるって話にはなったんだけどよ。あいつ、説明が分かりやすいかどうかは別問題だろ?」
「聞こえてんぞ、切島!」
少し離れた席から、爆豪の怒声が飛んできた。
「うおっ、聞こえてたか!」
「聞こえるように言ってんだろうが!」
「いや、そこは聞こえないふりしてくれよ!」
切島が笑いながら返すと、爆豪は盛大に舌打ちした。