第6章 保須市襲撃事件
こっちは聞いちまったんだ。
あいつが個性を使えないことも。
相澤が本気で怒っていたことも。
なのに本人は、何事もなかったように笑っている。
これからの授業をどうするつもりだ。
個性を使う訓練だってある。実技もある。もし戦闘訓練で相手と組まされたら?
今までのように動けるはずがない。
それとも、個性がなくても何とかできるだけの技術を持っているとでもいうのか。
――いや
あいつなら、やりかねない。
そう思ってしまう自分にも、腹が立った。
個性が使えないなら、普通は不利になる。
それなのに爆豪は、彼女が簡単に無力化する姿を想像できなかった。
(……クソが)
あいつは、分からないことだらけだ。
何を考えているのか。
何を隠しているのか。
そして――どこまで一人で抱え込むつもりなのか。
始業のチャイムが鳴った。
彼女はノートを開き、前を向く。
その横顔は、やはりいつも通りだった。
爆豪は机の下で拳を握る。
今すぐ問い詰めるつもりはなかった。
聞いたところで、あの女が正直に答えるとも思えない。
なら、見ていればいい。
授業中の動きも、実技での判断も、些細な変化も。
あいつが何を隠しているのか、自分の目で確かめる。
爆豪勝己は、そう決めた。
――個性を使えなくなったあの女が、これからどう動くのか。
それは、妙に気になることだった。