第6章 保須市襲撃事件
ならば、今は待つしかない。
雄英高校には、オールマイトもいる。
相澤もいる。
そして、何かと騒がしいクラスメイトたちも。
彼らと過ごす時間は、公安の任務とは違う意味で、彼女にとって大切なものになりつつあった。
「……せっかく、少しは普通の学生らしくなれたと思ったのに」
苦笑する。
個性を隠すことには慣れている。
だが、個性そのものを失った状態で、これまでどおりの自分を演じられるかは分からない。
それでも、学校へ戻らないという選択肢はなかった。
彼女は携帯電話を手に取り、画面を消した。
「……なんとかするしかないわね」
いつものように、冷静に。
そう自分に言い聞かせる。
けれど、胸の奥には小さな不安が残っていた。
個性がいつ戻るのか、分からない。
誰にも知られずに、この状況を乗り切れるのかも分からない。
それでも、明日は来る。
彼女は窓の外を見つめた。
夕暮れの空が、ゆっくりと色を変えていく。
今まで、彼女は自分の力を使って、数え切れないほどの状況を切り抜けてきた。
けれど、これからは違う。
自分の個性が使えないまま、誰にも正体を知られず、雄英高校で過ごさなければならない。
それは彼女にとって、これまで経験したどんな任務とも異なるものになるだろう。
「……どうなることやら」
そう呟いた彼女の顔には、いつもの余裕のある笑みはなかった。
ただ、先の見えない日々を前に、静かに考え込む女の姿があった。