第6章 保須市襲撃事件
「個性が一時的に使えなくなる可能性も、身体に大きな負担がかかることも」
「それなのに……!」
オールマイトの声が、思わず強くなった。
彼女の肩が、わずかに揺れる。
医師が静かに二人を見守る中、彼は言葉を続けようとして――口を閉じた。
怒鳴りたいわけではない。
彼女を責めたいわけでもない。
それなのに、胸の奥から湧き上がる感情を抑えられなかった。
彼女は、そんな彼の様子を見て、少し困ったように笑った。
「……心配をかけたくなかったの」
その一言に、オールマイトの表情が凍りついた。
「君は……」
「あなたには、いつも心配をかけているでしょう? だから、これ以上は……」
「違う!」
思わず、声が響いた。
彼女が目を見開く。
オールマイト自身も、声を荒らげたことに気づいていた。
彼は深く息を吸い、拳を握りしめる。
「……違うんだ、おもちくん」
今度は、静かな声だった。
「私は、君が何も話してくれなかったことに怒っているんじゃない」
彼女は黙って、彼を見つめた。
「君がどんな任務をしているのか、どんな危険を背負っているのか……私は、そのすべてを知っているわけではない。それは分かっている。君の仕事に、私が簡単に口を出せないこともね」
彼は一度、視線を落とした。
「けれど、君が自分の身体を犠牲にすることを、当たり前のように受け入れているのなら……私は、それを見過ごしたくないんだ」
彼女は唇を結んだ。
「……でも、あの場では必要だったの」
「分かっている」
オールマイトは即座に答えた。
「君がステインを止めなければ、誰かが傷ついていたかもしれない。君が何を考えて、どう判断したのか、私は信じているよ」
彼は、ゆっくりと顔を上げた。
「だからこそ、悔しいんだ」
その声が、ほんの少し震えた。
「私は、君がこんな思いをしなくてもいいように、もっと何かできたはずなんじゃないかと思ってしまう」
彼女の瞳が揺れた。