第6章 保須市襲撃事件
オールマイトと話をしていると、病室の扉が控えめにノックされた。
「失礼します」
入ってきたのは、白衣を着た医師だった。
彼女の主治医であり、公安からの依頼を受けて、彼女が任務中に使用する薬剤の処方と経過観察を担当している人物でもある。
いつもなら、彼は彼女の顔を見ると気さくに声をかけてくれる。
しかし、今日は違った。
どこか神妙な面持ちで、手元のカルテに目を落としている。
その表情を見ただけで、おもちは察した。
「……先生?」
医師は一度、オールマイトに視線を向けた。
それから、少し言いにくそうに口を開く。
「今回の検査結果について、お話ししておきたいことがあります」
「……ええ」
「まず、意識が戻ったことは幸いでした。ただ、今回の身体への負担は、これまでのものとは明らかに異なっています」
医師はカルテを閉じた。
「あなたが使用した薬剤ですが、通常のものよりも高濃度だったと確認されていますね」
「……そうね」
「以前の使用時と比べても、身体にかかる負荷は大きかったと考えられます。そこに、個性の過剰使用による精神的・身体的な負担が重なった」
医師の声は、慎重だった。
「その結果、現在、あなたの個性は一時的に発動できない状態になっています」
「…………」
病室が静まり返った。
オールマイトが、ゆっくりと彼女を振り返る。
「……個性が、使えない?」
「はい。現時点では、個性の発動が確認できていません。身体機能そのものに、直ちに重大な異常が見つかったわけではありませんが、個性の発動に関わる機能が強く抑制されている状態です」
医師は、彼女の反応を確かめながら続けた。
「回復する可能性はあります。ただ、いつ普段どおりに使えるようになるかは、今の段階では断言できません。数日で戻るのか、もっと時間がかかるのか……経過を見ていく必要があります」