第6章 保須市襲撃事件
彼女は視線を落とした。
「……そういうつもりじゃ、なかったの」
「分かっているよ」
オールマイトは静かに頷いた。
「君が、誰かを守ろうとしたことも。必要だと思って行動したことも、分かっている」
彼はベッド脇の椅子を引き、腰を下ろした。
「けれどね、君が無事に帰ってこなければ、私は安心できないんだ」
彼女は顔を上げた。
オールマイトは、いつもの豪快な笑顔を浮かべていなかった。
そこにいたのは、No.1ヒーローではなく。
ただ、目の前の少女を心配する一人の家族だった。
「……君は、私にとって大切な子なんだ」
その言葉に、彼女の瞳が揺れた。
何かを言おうとして、口を開く。
けれど、言葉が出てこなかった。
彼女はずっと、自分の役割を理解していた。
公安の人間として、任務を遂行する。
必要ならば危険を引き受ける。
誰かを守るためなら、自分が傷つくことも受け入れる。
それが自分の仕事であり、存在する意味なのだと。
「……心配、かけちゃったわね」
ようやく出てきた声は、思っていたよりも小さかった。
オールマイトは、ゆっくりと首を横に振った。
「心配をかけたことを謝る必要はないよ」
そして、彼女の頭にそっと手を置く。
「ただ、次は私にも頼ってほしい。君が一人で抱え込む必要はないんだ」
彼女は目を伏せた。
胸の奥が、じんわりと温かくなる。
その温かさに戸惑いながらも、彼女は小さく頷いた。
「……うん」
オールマイトは、ようやく安堵したように笑った。