第6章 保須市襲撃事件
「身体はどうだい? 頭痛は? 吐き気はないか? 意識ははっきりしているかい?」
矢継ぎ早に質問が飛んでくる。
「……ええ。少し頭が痛いけれど、大丈夫よ」
「大丈夫な人間は、病院のベッドで目覚めたりしないんだぞ!」
思わず声を張り上げてから、オールマイトははっと口を閉じた。
彼女の顔色を見て、声を落とす。
「……すまない。大きな声を出してしまったね」
「ふふ……」
彼女はかすかに笑った。
「オールマイトが、そんなに慌てるなんて珍しいわね」
「慌てるに決まっているだろう!」
即答だった。
「君が倒れたと聞いたとき、私は……!」
言葉が途切れる。
オールマイトは拳を握りしめた。
公安から連絡を受けたとき、彼は一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
任務中に個性を過剰使用。
路地裏で意識を失いかけていたところをホークスが発見。
病院へ搬送された。
報告は簡潔だった。
けれど、その短い言葉の裏に、彼女がどれほど無理をしたのかが透けて見えた。
そして何より。
彼は、彼女が幼いころから知っている。
本当は、誰よりも明るくて、好奇心旺盛で、思い立ったらすぐに走り出すような子だった。
それが、いつの間にか。
苦しくても笑い、傷ついても平然と立ち上がり、自分の限界を誰にも見せなくなった。
誰かを守るためなら、自分を犠牲にすることさえ躊躇しない。
そんな彼女を見るたびに、オールマイトは胸が痛んだ。
「……君は」
彼は、ゆっくりと口を開いた。
「また、自分一人で何とかしようとしたんだね」
彼女の笑みが、ほんのわずかに消えた。
「……仕事だったから」
「仕事なら、倒れるまで無理をしてもいいのかい?」
穏やかな声だった。
怒鳴っているわけではない。
責め立てているわけでもない。
だからこそ、その言葉は彼女の胸に深く届いた。