第6章 保須市襲撃事件
白い天井が見えた。
規則的な電子音が、静かな病室に響いている。
おもちは、ゆっくりと目を開けた。
「…………」
見慣れない天井。
消毒液の匂い。腕に繋がれた点滴。身体を包み込む、清潔なシーツ。
数秒かけて、彼女は自分がどこにいるのかを理解した。
「あぁ……」
昨日、路地裏で倒れたのだった。
ステインを止めるために精神領域を展開し、その代償で意識を失いかけた。持ち歩いていた高濃度の薬剤を使用したものの、身体は限界を迎えていた。
そこまで思い出し、彼女はゆっくりと目を閉じる。
――病院に連れてきてくれたのね、ホークス。
――ありがとう。
心の中で、そっと呟いた。
普段なら、目覚めた瞬間から自分の状態を確認し、今後の行動を考えていただろう。
けれど、今は身体が重かった。
頭の奥には鈍い痛みが残り、指先にも力が入りにくい。身体の内側には、まだ個性を使いすぎたとき特有の不快感が残っていた。
彼女はゆっくりと指を動かしてみる。
動く。
意識も、はっきりしている。
ひとまず、命に別状はなさそうだった。
「……よかった」
小さく呟いた、そのとき。
廊下から、慌ただしい足音が聞こえてきた。
「意識が戻ったというのは本当かい!?」
聞き覚えのある、よく通る声。
直後、病室の扉が勢いよく開いた。
「おもちくん!!」
飛び込んできたのは、オールマイトだった。
普段の教師としての姿ではない。今にも走り出しそうな勢いで病室に入ってきた彼は、ベッドの上で目を開けている彼女を見つけると、ぴたりと足を止めた。
「…………」
数秒間、言葉が出てこない。
ただ、彼女が目を開けていることを確かめるように見つめていた。
やがて、その表情がふっと緩む。
「……よかった。本当に、よかった……!」
心の底から安堵した声だった。
彼女は少しだけ目を丸くした。
「……オールマイト?」
「そうだ! 私だ!」
勢いよく答えたあと、彼は慌ててベッドのそばまで歩み寄った。