第2章 雄英高校入学編
休憩時間
彼女は自動販売機の前で水を飲んでいた。
「かっちゃん!」
「デクテメェ……!」
彼女が振り返る。
設置されたモニターには緑谷と爆豪の二人が向かい合っている姿が映し出されていた。
空気が明らかに違う。
周囲の生徒たちも距離をはらはらしながら、二人の戦闘を見守っている。
「……」
彼女の目が変わる。
さっきまでの生徒としての視線ではない。
公安で培った、分析の目。
まず、爆豪
姿勢、肩の位置、呼吸、拳、視線。
「……」
次に、緑谷
足の位置、重心、表情、呼吸、視線、二人の距離
――爆豪は、攻撃性が高い。
ただし、単純な怒りではない。
緑谷に対して、非常に強い感情がある。
敵意だけではない。
焦り、苛立ち、競争心
そして――
「……認めたくない、か」
小さく呟く。
一方、緑谷。
爆豪に対する恐怖があるが、それでも逃げない。
むしろ、何かを伝えようとしている。
「……興味深いね」
彼女は二人を見つめる。
単純な喧嘩ではない。互いの存在が、互いの行動を大きく変えている。
「二人とも相手を意識しすぎている」
その隣に常闇が立つ。
「緑谷と爆豪か」
「うん」
「どう思う?」
彼女は少し考える。
「今の二人は、かなり危険かな」
「ほう」
「爆豪くんは感情が先行すると、攻撃が直線的になる。でも、緑谷くんを前にすると判断力が異常に上がる」
常闇が黙って聞く。
「緑谷くんは逆。爆豪くんを前にすると、普段以上に自分を追い込む」
「……つまり」
「お互いが、お互いの能力を引き出してる」
常闇は二人を見る。
「敵同士としては厄介だな」
「うん」
彼女は頷いた。
「でも、味方になったら、共に闘えばもっと強いと思うなぁ
」
常闇が彼女を見る。
「貴様は、もうそこまで考えているのか」
「癖なの」
「……なるほど」
そのとき、再び爆豪の怒鳴り声が響いた。
「デク!!」
緑谷も負けじと言い返す。
彼女は二人を見ながら。
「……面白い二人」
そう呟いた。
まだ彼女は知らない。
この二人が、やがて雄英を代表するヒーローへと成長していくことを。
そして、その二人と同じ教室で過ごす日々が、彼女自身の人生さえも、大きく変えていくことを。