第6章 保須市襲撃事件
ヒーローたちは、ただ呆然とその光景を見つめていた。
「……終わった、のか?」
誰かが呟く。
その問いに、すぐ答えられる者はいなかった。
一方、エンデヴァーは煙の向こうにある屋上から、目を離さなかった。
あの女だ。
彼女が脳無の動きを止め、戦況を覆した。
その可能性が、限りなく高い。
「……直接、確かめる必要があるな」
エンデヴァーは炎を噴き上げた。
地面を蹴り、身体を一気に上昇させる。
燃え盛る炎が夜を照らし、彼の巨体が屋上へと迫った。
そして、おもちのいる屋上に降り立つ。
熱風が吹き抜け、彼女の金髪が揺れた。
彼女は驚く様子もなく、ゆっくりと顔を上げる。
目の前に立つのは、炎をまとったトップヒーロー。
エンデヴァーだった。
「……お前か」
低く、威圧感のある声。
彼の視線は、彼女の顔から手にしたライフルへと移り、再びその瞳へ戻った。
「今の脳無たちの動き。お前がやったのか」
彼女はすぐには答えなかった。
ただ、相手の様子を観察する。
炎の出力。呼吸の乱れ。視線の動き。こちらへの警戒。
戦闘直後でありながら、彼は周囲への注意を怠っていない。
さすがは現役のトップヒーロー、といったところか。
「質問に答えろ。何者だ」
彼女はライフルを静かに下ろした。
そして、口元にほんのわずかな笑みを浮かべる。
「……少なくとも、今夜はあなたの敵ではありません」
エンデヴァーの眉が動いた。
「今夜は、だと?」
「ええ」
彼女は涼しい顔で答える。
「あなたたちが苦戦していた相手を片づけた。それだけでは、信用できませんか?」
挑発とも取れる言葉だった。
エンデヴァーの炎が、わずかに揺らめく。
彼は目の前の女を見据えた。
その容姿だけなら、戦場に似つかわしくないほど美しい。
だが、先ほどの異常な戦況を覆した力と、目の前の女が放つ不自然なほどの落ち着きが、その印象を打ち消していた。