第5章 束の間の休息
「一位、轟」
「……!」
轟はいつもと変わらない表情で、前を向いていた。
「二位、爆豪」
「チッ」
名前を呼ばれた爆豪は、短く舌打ちをした。
周囲からは、さすがだという声が上がる。
体育祭で圧倒的な実力を見せた二人だ。プロヒーローたちが注目するのも当然だった。
続いて、相澤は何人かの名前を読み上げていく。
「おもち。複数の事務所から指名が入っている。飯田、麗日も同様だ」
「えっ、私も!?」
麗日が目を丸くする。
「よかったな、麗日くん!」
「うん……! ありがとう、飯田くん!」
飯田も姿勢を正し、真剣な面持ちで自分の名前を受け止めていた。
おもちは、周囲の反応を気にすることなく、静かに資料へと視線を向ける。
複数の事務所から指名が入った。
それ自体は予想の範囲内だった。
体育祭で披露した個性と戦闘能力。それらが評価されたのだろう。
しかし、彼女の脳裏には、別の考えが浮かんでいた。
――どこまで見られているのかしら。
体育祭で使用した個性。
あの試合で、自分の身体に何が起こっていたのか。
プロヒーローたちが目にしたのは、あくまで表に現れた一部分にすぎない。
そう考えると、指名の数を素直に喜ぶ気持ちには、わずかな警戒心が混じった。
そのときだった。
「……ゼロ、か」
小さな声が聞こえた。
緑谷だ。
自分の名前が呼ばれなかったことに、彼は少しだけ視線を落としていた。
体育祭では、何度も限界に挑み、強敵と向き合ってきた。
それでも、プロの目に留まらなかった。
その事実が、彼の胸に小さな影を落としているのがわかった。
周囲の会話は続いている。
誰もが自分の指名数や職業体験先の話に夢中になっていた。
そんな中、おもちは緑谷へと視線を向けた。
「緑谷くん」
「えっ?」
呼ばれて顔を上げた彼に、彼女は穏やかな笑みを向ける。