第5章 束の間の休息
朝の雄英高校。
登校したおもちは、教室へ向かう前に職員室へと足を運んでいた。
昨夜は、ホークスに無茶をしたことを咎められたばかりだった。
そして今朝は、不思議な夢を見た。
足元に広がる水面。 大きな赤い鳥居。 黄金に輝く龍。
そして、あの言葉。
――迎えに来た。
目を覚ましてからも、あの龍の瞳が脳裏に焼きついて離れなかった。
「……考えても、答えは出ないわね」
小さく息を吐き、彼女は職員室の扉を開けた。
室内を見渡すと、見慣れた大きな姿が目に入る。
「おはようございます。オールマイト」
「おや? おもちじゃないか!」
声をかけられたオールマイトは、書類から顔を上げた。
「どうしたんだい? 何か用かな?」
「ええ。少し相談したいことがあって」
いつもの落ち着いた声音だったが、彼女の表情には、わずかな迷いが滲んでいた。
それに気づいたオールマイトは、手元の書類を置く。
「……何かあったのかい?」
その問いに、彼女は一瞬だけ視線を伏せた。
両親の墓参りをしたあの日。
叔父と向き合い、これまで自分がどれほど多くのことを隠してきたのか、改めて考えさせられた。
公安としての立場。 個性の危険性。 自分の身体に起こり得る異変。
彼を心配させたくない。
そう思って秘密を抱え込んできたけれど、何も話さないことが、かえって彼を不安にさせてしまうのかもしれない。
自分一人で抱え込むことが、必ずしも正しいわけではない。
だからこそ、少しずつでいい。
叔父を頼ってみよう。
そう決めたのは、彼女自身だった。
「今朝、妙な夢を見たの」
「夢?」
「ええ。足元には水が広がっていて、振り返ると大きな赤い鳥居があった。そこで誰かに名前を呼ばれて……」
彼女は、夢の中で見た光景を一つずつ説明していった。
黄金に輝く巨大な龍。 彼女に向かって深々と頭を下げたこと。 そして、龍が口にした言葉。
「……『迎えに来た』って」
最後まで聞いたオールマイトは、すぐには答えなかった。
「なるほど……」