第4章 雄英体育祭編
「私ね、そろそろ話さなきゃいけないと思ってる」
オールマイトの表情が変わった。
「何を?」
彼女はすぐには答えなかった。
鞄に手を伸ばし、煙草を一本取り出す。
火をつけ、ゆっくりと煙を吐き出した。
それから、鞄の内ポケットを探る。
取り出したのは、一本の注射器だった。
透明な筒の中には、無色の薬液が満たされている。
オールマイトの視線が、注射器に釘付けになった。
「……それは?」
「個性の暴走を抑えるための薬よ。即効性があるの」
彼女は注射器を指先で回し、淡々と説明した。
「長時間、個性を使用すると、私の身体は制御を維持できなくなることがある。体育祭のときも、限界を超えていた」
「暴走……?」
「ええ。放っておけば、周囲を巻き込む可能性があった。だから、医療班に触れられるわけにはいかなかったの」
オールマイトは息を呑んだ。
彼女は、あの状態で自分の身体だけでなく、周囲の人間への影響まで考えていたのだ。
しかし、彼の表情から心配が消えることはなかった。
「なぜ、そんな大切なことを黙っていたんだ…!!」
「……言えば、任務から外されるかもしれないでしょう?」
「それは――」