第4章 雄英体育祭編
通路のモニターまでたどり着いた彼女は、壁に手を添えながら足を止めた。
画面の中では、決勝戦が始まろうとしていた。
爆豪勝己と、轟焦凍。
先ほどまで自分と戦っていた少年が、今度はあの氷と炎を操る少年と向き合っている。
画面に映る爆豪の姿を見た瞬間、彼女の意識は少しだけ鮮明になった。
彼は、先ほどとは違う顔をしていた。
勝利への執念。
強者と戦うことへの渇望。
そして、自分の力を真正面からぶつけられる相手を求める、純粋な闘争心。
彼女はモニターを見つめた。
やがて、轟の右半身を覆っていた氷に、変化が生じる。
パキ……
氷に亀裂が走った。
そして、ゆっくりと溶け始める。
「……!」
彼女の目が、僅かに見開かれた。
轟の左半身から、炎が立ち上った。
スタジアムがどよめく。
爆豪の目が輝いた。
「……そうだ」
口元が歪む。
「それだよ」
炎が大きくなる。
「それで来い、轟ィ!!」
爆豪は嬉しそうに笑った。
「やっと本気で――」
しかし、轟の瞳に浮かんだのは、戦意ではなかった。
父親、母親、幼い頃の記憶、焼けつくような炎、轟の表情が揺らぐ。
「俺は……」
炎が揺れた。
「この力は……」
左手が震える。
フッ
炎が消えた。
「…………」
モニターの前で、彼女は息を止めた。
爆豪の表情が固まる。
「……は?」
静まり返るスタジアム。
轟は右半身の氷だけを残して立っていた。
爆豪の顔が歪んだ。
「てめぇ……」
怒り。悔しさ。
自分が求めていた勝負を、目の前で拒絶されたことへの苛立ち。
「ふざけんなァァァ!!」
爆豪が突っ込む。
「勝負しろォ!!」
轟は反応する。
だが、爆豪は止まらなかった。
両手を前に突き出す。
「――榴弾砲着弾!!」
巨大な爆発が轟を包み込んだ。