第4章 雄英体育祭編
彼女は顔を上げた。
そうだ。
雄英体育祭。
試合はまだ続いている。
そして、もう決勝戦まで進んでいるのだ。
ぼんやりした頭で、彼女はようやく状況を整理した。
自分は爆豪に負けた。
その後、個性の暴発を抑えるために注射を打ち、意識が朦朧としたところを彼に見つかった。
それから、ここまで運ばれてきたのだろう。
「……決勝戦、見なきゃ」
そう呟いて、彼女はゆっくりと上体を起こした。
少しだけ、目の前が揺れる。
それでも、今度は先ほどほどの眩暈はなかった。
ベンチから足を下ろし、慎重に立ち上がる。
机の上の書き置きをもう一度見て、彼の上着を丁寧に畳んだ。
返さなければ。
そう思いながらも、すぐに彼を探しに行くつもりはなかった。
今、彼は決勝戦を控えている。
余計な心配をかけるべきではない。
彼女は上着を腕に抱え、控室の扉を開けた。
通路には人影がなく、遠くから観客たちの熱狂が伝わってくる。
壁に手を添えながら、一歩ずつ進む。
まだ本調子ではないけれど、歩ける。
それを確かめるように、彼女はゆっくりと観覧席へ向かった。
クラスメイトたちが待つ場所へ。
そして、彼女を追いかけてきた少年が、今どんな顔で決勝戦を迎えているのかを確かめるために。