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光の裏側で、君と ※ヒロアカの爆豪寄り

第4章 雄英体育祭編


いつもそうだ。
肝心なところで何も話さない。
何を考えているのか分からないくせに、戦闘になれば恐ろしいほど冷静で、どこまでも強い。
それなのに、今の彼女は――。

「……っ」
彼女の指先が、かすかに震えた。
注射器を握る手から力が抜け、プラスチックの筒が膝の上で滑る。
彼女は慌てて握り直したが、その動きさえ覚束ない。
爆豪は、それを見逃さなかった。

「おい、顔上げろ」

「……嫌よ」

「いいから」

「大丈夫だって言ってるでしょう……」
声が掠れていた。

反論する気力さえ、残っていないのだろう。
それでも彼女は、いつものように他人を遠ざけようとする。
爆豪は、目の前の彼女を見つめた。
試合中、あれほど余裕のある笑みを浮かべていた女。
自分の爆発を封じ込め、会場を沸かせた女。
負けが決まっても、取り乱すことなく立ち上がった女。
その彼女が、今は壁にもたれかかることさえ精いっぱいで。
――大丈夫なわけがねぇ。

「……チッ」

爆豪は小さく舌打ちした。

「お前、ホントに何なんだよ……」

問いかけても、彼女は答えない。
ただ、もう話すことすら億劫だというように目を閉じた。
その顔を見た瞬間、爆豪の中で何かが切れた。

「……ああ、もういい」

「……え?」

次の瞬間。
彼女の身体が、ふわりと浮いた。

「ちょっ……!?」

突然のことに、彼女は目を見開く。
爆豪が、彼女を抱き上げていた。
片腕を背中に回し、もう片方の腕で膝裏を支える。
いわゆる、お姫様抱っこだった。

「な、何を……!」

「うるせぇ。黙ってろ」

「下ろして!」

「嫌だね」

「爆豪くん……!」

「その顔でまだ強がる気か、てめぇは!」
低い声が、通路に響いた。

彼女は言葉を失った。
爆豪は怒っていた。
けれど、その目に浮かんでいるのは、いつもの勝ち気な闘志とは違うものだった。
苛立ち。
困惑。
そして、隠しきれない焦り。

「……お前、全然大丈夫そうに見えねぇんだよ」
吐き捨てるように言って、爆豪は彼女を抱き直した。
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